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インターネット版 《サンサーラ》
マンニャン族の医療事情について フィリピンの医療事情 今年に入ってマラリアが猛威をふるっている。フィリピン南部のスル諸島ですでに死者135名、マニラ首都圏カロオカン市で100名以上の患者が出ている(98.3現在)。政府はすでにスル諸島に向けて緊急医療物資の輸送を開始、対策を急いでいる。マラリアをおこすハマダラ蚊は清流の流れる田舎しか繁殖できない。汚染の進んだ首都圏での流行は不気味だ。 過去2年間、ニュースになった病気を紹介する。 96年、都市部を中心にデング出血熱が猛威をふるった。感染源の蚊は不潔な溜まり水で繁殖する。スラムを中心に体力のない多くの老人子供の命を奪った。また、この年はしかが大流行、保健省は「はしか撲滅運動」を宣言した。97年、マニラ市内の私立大学でA型肝炎が大流行、1,000名以上の学生が感染し、訴訟問題になった。 伝染病の蔓延には原因がある。一般市民の衛生、病気に関する無知、政府、公的機関の無対策、経済的理由で十分な医療を受けることができないことなどである。 こうした事情は、ミンドロ島の山間部に住むマンニャン族に集約される。学校に行く機会に恵まれない彼らが、医療衛生について学ぶチャンスは無い。厳しい貧困のため常に栄養失調で病気にかかりやすく、薬を買うお金は無い。 失われる伝統的生活基盤 第一死因 マラリア
ミンドロ島のマンニャン族居住地はフィリピンでもマラリア発生率の最も高い所のひとつである。統計資料は無いが、マンニャン族の全てがマラリアに感染していると考えてよく、体力の低下に伴って発病する。マラリアは、結核、肺炎と並んで第一死因であり、近年の著しい環境破壊による食糧不足は状況を年々悪化させている。本来、山の豊かな自然と共生してきたマンニャン族は比較的良好な健康を保持してきた。簡単な焼き畑を中心にしながらも、健康保持に必要なタンパク源や各種ミネラル、天然の薬草などは山の恵みにより簡単に入手できたのである。しかしながら、一般フィリピン人による山林の乱伐、山の浸食は彼らの生活基盤であった豊かな山の資源を荒廃させてしまった。また、低地近くの彼らの土地は一般フィリピン人の移民、開墾によって年々喪失の危機にある。こうした環境の激変は、特に比較的低地近くに住むマンニャン族の健康状態、栄養事情を著しく悪化させている。
事業地の医療事情 栄養失調 21世紀協会の事業地はこのように伝統的生活手段を無くした比較的低地近くの村である。そのため村民の栄養状態は非常に悪く、慢性的栄養失調に苦しんでいる。 シプヨ村を例にとると約60名の村人中10名が結核に感染、治療を行った(97、1)。 マラリアはこの村も例外ではなく、特に気温が下がり食糧が枯渇する雨期に患者が多発する。特に熱帯性マラリア(後述)は腎不全や脳炎を伴うケースが多く、治療が遅れると死に至る。96年は2名が重体内1名死亡、97年は4名重体郵政省ボ金による投薬で回復した。カラミンタオ村では97年9月、98年1月とインフルエンザが乳幼児を中心に流行した(延べ40件以上)。肺炎を起こし入院するケースも数件あったが郵政省ボ金の援助で回復している。また、両村共に衛生環境の劣悪さから皮膚病が蔓延、疥癬(かいせん)や結膜炎が周期的に流行る。特にシプヨ村では雨期にあたる97年8月疥癬が村人の約半数に広がり、衛生指導と投薬を徹底した。 奨学生
サンタクルスで寮生活をするマンニャン奨学生の健康状態も悪い。胎児の時に母親からマラリア感染しているため、気候の変化や栄養不足が簡単に発病の引き金となる。また、乳幼児期を栄養失調で育っているため体力がなく、病気にかかりやすい。 96年度は子供達のほぼ全員がマラリアを発病、中には数回繰り返し危険な状態に陥る子供もいた。 また、96年6月の学期はじめ、村から戻った奨学生の多くがアメーバ性赤痢にかかっていた。親元での不衛生な生活用水が原因とみられている。97年度は前年度と比べると発病件数が激減している。衛生指導を徹底したこと、食費の大幅削減の中、栄養のバランスに特に注意したからである。また、マラリア対策として、ほとんどが親元であるマンニャン集落で感染するため、97年度は帰省回数を減らした。過去二年間に発生した病気を数えてみると右のとおりである。 医療、衛生への取り組み 基礎教育、衛生 マンニャンの人々の健康状態を改善するには総合的な取り組みが必要である。医療サービスや、薬の配布は一見効果的にみえてもその場しのぎで、根本的問題の解決にはならない。病気の原因は大きく分けると、栄養の不足と衛生知識の不足であり、これを解決しなければならない。そして原始的で、迷信の支配する世界観の中で生活する彼らに合理的なものの考え方、衛生、医療についての基礎知識を教えるには基礎教育、「読み書き」という土台が必要である。さらに、長年にわたり一般フィリピン人から差別され、卑しめられた結果の劣等観を払拭し、民族としての自信を回復しなければならない。マンニャンのほとんどは病院や医師の価値を認めても、劣等観と恥かしさから躊躇してしまうからである。 21世紀協会ではこれまで、井戸堀事業による、安全で清潔な生活用水の確保、識字教育による基礎教育の推進、奨学金事業による基礎教育の普及と社会性の獲得をめざしてきた。また、食糧事情を改善し、民族の誇りを回復するために、各種農村開発事業を進めている。
1998.3 H. Kawashima
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