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21世紀協会 
WINDMILL 設立趣意書

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WINDMILLb  21世紀協会は、ここに特定非営利活動法人として名乗りを上げ、社会不正義のもと、貧しさに苦しむ多く人々が、自らの現状を打破する手助けとして、教育の普及につとめ、すべての子供が等しく教育を受ける機会に恵まれるよう、活動を展開する。

WINDMILLb  20世紀は大きな世界戦争を二つまで体験し、科学技術の発展が紛争解決の手段としての武力行使を不可能にした世紀だった。そのことを理解しない一部の者による地域的小競り合いは相変わらず続いていて多くの人々が苦しんでいるが、世界は全般的に平和である。しかし、戦争で苦しむことのなくなった人々も、平和を謳歌している「先進国」にあるほんの一部の人々をのぞいて、貧しさに苦しんでいる。

WINDMILLb  平和で豊かな世界を実現したいとは誰もが言う。では、どうすればそのような世界が現実のものとなるのだろうか。簡単なことだ。まずは、多くの人々に破壊と苦しみしかもたらさない戦争を、地域紛争に至るまでやめることである。異論はあるまい。なのに、これほど明快な真理をどうして実行できないのだろうか。それは、他より自己を優位ならしめたいとの思いが強すぎるからである。他より自己に多くの富を、民族の繁栄を、思想や宗教の普及を、そういった頑迷な思惑にとらわれるあまり、他を滅ぼしてまで自己の繁栄を願う。どんな立派な理由をつけようと、それが戦争の正体だ。

WINDMILLb  来る21世紀は協調の世紀であらざるを得なくなった。力による制圧も限界に達し、ベルリンの壁の崩壊によって社会主義に勝利したはずの資本主義も行き詰まってしまった。自然から搾取するばかりの方途が、環境を破壊し尽くし、今や、人類は自然の圧倒的な力による巻き返しの脅威におびえている。他より多くのものを求め、自己の主張を世界に敷衍せしめようと力を行使すれば、行き着くところ、我が身はもとより、人類、さらに、私たちの生活の基盤であるこの惑星の殲滅(せんめつ)でしかない。

WINDMILLb  社会不正義は形を変えた戦争である。違うのは、片方が圧倒的優位に立ち、戦うまでもなく勝負が決まっていることである。社会不正義には色々な形があるが、私たちは貧富の差に注目したい。

WINDMILLb  南の第三世界の貧しさには、目に余るものがある。北の「先進国」は南の安価な資源と労働力を利用して今日の豊かさを手に入れた。しかし、自身の努力と精進を積み重ね、技術革新を成し遂げた結果の繁栄とはいえ、南の資源を利用し、その貧しさを残したまま、あるいは、その貧しさを助長しての栄華は、人としてのあるべき姿ではない。私たちは、意識するとせざるとに関わらず、一人一人が南の貧しさに荷担していることを認識するべきである。

WINDMILLb  そして、教育。今の第三世界では、貧しいということは、すなわち、教育がない、教育を受けられない、と言うことと等しい。経済的、社会的理由から世界で1億人以上の子供が初等教育を受けられないでいる。教育のない人間は、教育や力のある人間に操られやすい。教育の独占は、富の寡占以上に、権力の占有につながる。

WINDMILLb  今、南の国の人々の多くは、貧しさの中で苦しんでいる。しかも、初等教育さえ欠く中で、その貧しさがどこからくるのかを見きわめるだけの力を持っていない。人々は何の反省もなく、為政者のいいなりになっている。本来、豊かな実りを約束された南の熱帯雨林が対外借款のかたに切り伐されるのを止める術さえない。そして、北の「先進国」はいよいよ富み、南の「途上国」はいよいよ貧しくなって行く。

WINDMILLb  この、果てしない悪循環を断ち切るには、南の国々自身の、内部から現状を打破する力が必要である。貧しい国は、その貧しさゆえに、いよいよ貧しくなる、そういった構造を変えるには、人を育成するしかないと考える。

WINDMILLb  日本は戦後奇跡の復興を遂げたと言われている。さらにさかのぼって、明治維新以後、日本は驚異的な速さで近代国家に成り上がったとも言われる。理由はいろいろあろうが、中でも、日本はトップレベルの識字率を誇っていたということが挙げられる。これは、江戸時代の寺子屋の伝統を受け継いだ初等教育の幅広い普及によるものである。戦後、日本は焼け野原になり、すべてを失ったが、教育というものは爆弾で焼いてしまえるものではない。戦後の復興を支えていたのは、戦争を生き残つた世代のたゆみない努力とそれを支える教育だった。資源を何も持たなかった日本がただ一つ豊に持つていたものこそが教育を受けた人という資源だったのである。

WINDMILLb  いわゆる学校教育は、技術指導などと違って、すぐに役に立つものではない。しかし、役にも立たない詩を暗誦し続けることがやがて田畑の実りを多くし、生産を増やすことにつながることを私たちは識らなければならない。時間はかかるが、着実な歩みである。

WINDMILLb  この活動は、私たちの力によつて逆境の人々を救おうなどというものでは決してない。言うなれば、今一度、日本の豊かさを支えて来たものを見直して、感謝の気持ちを小さな形として表わしたものに過ぎない。世界の人々が、今の自分は自分以外の何者かによって生かされていることを認識し、もっと広い世界に思いをいたすことを希ってやまない。


1999年1月9日
21世紀協会設立趣意書